良くある革包丁の売り文句です。
「鋭い切れ味!」
「長切れします!」
本当かもしれません。
でも、それはしっかり研げている場合の話です。
革包丁は砥ぐのが非常に難しいため、砥ぎに慣れていない人が正しく刃を付けることは至難の業です。
革包丁に苦手意識を持つほとんどの人は、そもそも砥げていません。
そこでクラフトノラでは、まず満足できる革包丁専用砥ぎガイドを製作し、
そのガイドに最適な革包丁を設計するというアプローチをとりました。
試行錯誤の結果生まれたのが、この革包丁シリーズの『カルタブル』です。
カルタブルは、使用している鋼材「青紙(1号)」の意味です。
青紙1号である理由は、白紙では耐摩耗性が弱く長切れしない、青紙スーパーだと硬すぎて砥ぎ上げるのが困難、
青紙二号だともう少し切れ味が欲しい、ということで砥ぎやすさと切れ味のバランスから青紙1号を選定しています。
硬い鋼と柔らかい地金を合わせた複合鋼材(いわゆる日本の刃物です)なので全鋼材のものと比べて砥ぎ易いです。
ガイドを使う事で、誰でも必ず理想的な刃付けができる革包丁です。
研ぐのに邪魔になる木の柄はついていない為、どこまでも砥げます。
購入者が砥いで使うことを大前提にしていますので、この製品は出荷状態では刃は仕上がっていません。
刃付けまで行うと手間がかかり過ぎて高額になってしまうので、最安値でお渡しできるようにしています。
購入後、最初にダイヤモンド砥石で任意の刃先角度に設定してから砥ぎあげてください。
革漉き専用に幅は広めの36ミリ、出荷状態の砥ぎ角度12°で設計しました。
柄はカバーを付けた状態で持ちやすくなるように幅24ミリです。
刃先の鋭さを求めるほど、刃裏の傷が刃先のミクロなギザギザの原因になる為、しっかり鏡面に研げているかが重要になってきます。
通常の高級革包丁は裏漉きがある物が多く、ある程度砥ぐと刃の裏側にある刃先の鏡面部分が無くなってしまうため、定期的に「裏出し」という作業が必要になります。
裏出しは、刃を金槌で叩いたりする為かなり難しく、失敗すると刃が割れます。
こちらの革包丁は、特殊な裏漉き加工により、大掛かりな裏出しが必要ありません。
仕上げ砥石で砥ぐことで裏出しが完了する仕組みになっています。
裏出しは解説が難しいので、興味がある方は「裏出し 鉋」などで検索して調べてみて下さい。
柄まで鋼が入っていますので、砥ごうと思えばそこまで砥げますが、現実的には幅広の部分4センチ程度が砥ぎシロとなります。
殆どの方は、その4センチで趣味レベルなら死ぬまで使えるかと思います。
あるいは研ぎ切ってしまっても幅狭の革包丁に転用もできます。
なお、研ぎ角度を鈍くして裁ち用としても問題はありません。
革の裁断専用に設計したモデルは、刃先角度を45°とすることで、ペンのように使用しつつ、コーナーでは普通の革包丁のように押切るやり方もできるようにしました。
幅は15ミリ、出荷状態の砥ぎ角度は16°です。
あまり鋭角にすると刃先が欠けやすくなります。
16°でも良く切れます。
こちらは漉き用ほど鋭く砥ぎあげる必要がないのと幅が狭くベタ裏でも研げる為、裏漉きをいれてありません。
カッターとの大きな違いは、通常の革包丁と同じ側に片刃を付けてある点です。
つまり、ペンを持つように少し傾けて使うことことで切った面が垂直になります。
構造上、右利き用と左利き用がありますが、製造ロットの関係で現在は右効き用のみの販売となります。
こちらも柄まで鋼が入っているのでどこまでも砥げますが、短くなると持ちにくいのでやはり4センチくらいが砥ぎシロです。
趣味レベルなら死ぬまでは使えると思います。
まずは正しく研ぐのに必要な砥石です。
大きく削り刃の角度を決めるためのダイヤモンド砥石。
砥石は1000番、2000番、5000番を用意しました。(2000は無くても研げます)
革砥は刃先のバリや目に見えない傷や欠けを研磨し完全に仕上げる為と、少し切れ味が落ちた時の簡易的な再研磨に必要になります。
ミシン油は研ぎガイドの注油用と革砥に使います。
研ぎガイドが無いとこの革包丁を使う意味がありませんので、必ずご用意ください。
まずは少しだけ裏を研ぎます。
鏡面にしますので、平面の出ている5000番以上の仕上げ砥石か、裏出し専用の金盤と金剛砂を使って下さい。
漉き用は幅が広くなっている部分全体が砥石に乗るようにして砥ぎます。
上が研ぐ前、下が裏研ぎをしたものです。
刃先が1ミリくらい鏡面になっていればOKです。
裁ち用はやらなくても良いですが、やるのであれば斜めの部分全体にかかるように裏研ぎしてください。
研ぎガイドにセットします。
刃先を痛めないために必ず柄側から抜き差しして下さい。
ロブストを使う場合は、ロブストのページの表から設定したい角度を探し、その数値を木片などに書いて定規として使って下さい。
カルタブルの厚さは2.2ミリです。
同じ定規を使う事で砥ぎ量を最小限にできますので、次回以降も使う為に保管して下さい。
オリジナルの革砥は定規スペースもついてますので、ご検討ください。
断ち用は、この様にガイドに取り付けます。
右利き用であれば右寄せにつけて、右の蝶ナットは強めに締めます。
左の蝶ナットは締めすぎるとガイドの板が歪みますので刃物が動かない程度に締めるして下さい。
最初にダイヤモンド砥石を使って、刃先の角度を作っていきます。(水は使いません)
複合鋼材なので、地金部分はアッサリ研げますが、刃先の鋼が広くなると急に進まなくなります。
それが青紙一号の硬さです。
最初だけなので頑張って研いでください。
次に砥石で砥ぎます。(水を使います)
1000→2000→5000の順に研いでいきます。
刃の黒幕の場合は黄色→緑→紫の順です。
この砥石は非常に高性能なのでオススメです。
漉き用はガイドに付けたままだと刃の真ん中に研ぎ跡が付いてしまうので、ガイドを外してから裏を軽く研いで(ゆっくり5往復程)、カエリを取ります。
取りきれない場合は、シノギ面を砥石にピッタリ押しつけて、ゆっくり5往復研いでください。
力は入れません。
ここで角度が変わると台無しなので慎重に。
その後もう一度裏を5往復研いでください。
ベタ裏である裁ち用はガイドに付けたままでも大丈夫です。
最後に革砥で磨き上げます。
革砥には青棒(コンパウンド)をミシン油で溶かし付けて下さい。
刃先の角度と並行に押し当てて、必ず手前にゆっくりと引いて磨いてください。
表裏5回ずつ磨いて刃先が整うまで繰り返して下さい。
押すと革砥が切れてしまいます。
刃を立てて研いでしまうと刃先の角度が鈍くなってしまいますので注意して下さい。
裁ち用は、写真の方向に引いて磨かないと、尖っている刃先が背側からでも革砥を切ってしまいますのでご注意下さい。
使用していて切れ味の鈍りを感じたらまずは革砥で磨いてください。
10回程度はそれだけでも十分切れ味が回復します。
目に見えないレベルで刃先が丸まってきて切れ味が戻り切らなく感じたらまた砥石で砥ぎなおしてください。
特に裁ち用は厚め(2~3ミリ)の革でカバーを作って取り付けないと金属のままでは薄過ぎて使いにくいかと思います。
裁ち用は、柄後部を持って安全に抜き差ししやすいようにチューブ状に作ると良いかと思います。
気持ち緩めに作っても刃物と接するトコ面は摩擦が強いため使う時には抜けませんが、キツめに作ると抜き差しするときに力を入れて抜かなくてはならなくなり怪我しますので、緩めをオススメします。
漉き用も薄め(1~2ミリ)の革でカバーを作ってあげた方が使いやすいです。
漉く時に包丁を持たない方の手の人差し指で押してスライドさせる人が多いと思いますので、その指の当たるところまでカバーしてあげると使いやすくなります。
利き腕によって左右を考慮してください。
写真の者だと通常は右利き用カバーになります。